レジ下のショーケースにこじんまりとまとまって置かれていたプリンだ。
かえって早速あけてみる。
三浦半島産地卵のプリンだ。1個180円。
買うときに「もち帰り時間は?」と聞かれた。保冷剤を入れてくれるのだ。1個180円のプリンに、保冷剤を入れるのも大変だな〜などと思ってしまった。
というのも、パティスリーと名のつく店で買うプリンはたいてい400円はするから、安いな〜と思っていたからだ。
梅やは本来業務用(焼き鳥屋とかホテルとかレストラン)を中心とする鶏肉専門店であって、様々なブランド鶏を扱うが、卵は「三浦半島産」という表示だ。
安易な○○鶏的ブランド表示が横行する中、専門店としての見識を感じる。
横から見るとこんな風。
ありゃ、ピンボ(>_<)
いまとなっては読み取れないものもあるが、保存料や添加物は使われていないことははっきりとわかる。
下層部分には、色の濃いカラメルソースがたっぷり目に。
はやくたべた〜い!
少しすくうとプリン本体は、やや堅め。滑らかでもクリーミーでもなく甘くもない。
口に含むと、ゆっくりと卵の味わい。
きっちりと過不足なく卵の味がする。
われわれの消費資本主義が生み出した、味わい主導の(うまければ良い、という類の)やたらにクリーミーで甘い、味覚に淫したものとは明らかに違う。
※豆腐における、京都森嘉の清冽な深さと、近頃のクリーミーな「男
前」や「ジョニー」との違いと同様であり、
チーズにおけるヨーロッパ伝統のウォッシュの深さとアメリカンな
サンタンドレの生クリームの濃厚さの違いとも、また同様であろう。
ここには、美味に淫することなく、素材に忠実であろうとする「作り手」の、作り手としての健全な倫理性とでもいうか、もの作りにおけるクラフトマンシップに相当するような、潔さがある。
消費資本主義の過剰な装飾や過剰な味覚に抗する、
「素」の自然性があり、その自然性に沿って生きようとする人間の自然性がある。
※ ※ ※
今度は、底まで掘り下げて、たっぷりカラメルをすくう。
これまた媚びも、へつらいもない、ほろ苦く、あくまでほろ苦く、最後にほんのり甘いカラメルソースの深い旨みがすとんと舌を通過して消えてゆく。
プリン本体はこのカラメルを引き立て味わうための土台(プラットフォーム)の役割だ。
なんとも深い―
がすぐに消えてなくなる、はかなさ。
この、はかなさに惹かれて、
もう一口、もう一口、と止まらなくなる。
もっとカラメルを、と、わかっていてもやはり、
次第に味覚の欲求に淫してしまう(^^ゞ
これも「欲望」に曳かれて生きる人間ならではの苦痛と裏腹の口福のなせる業、であろうか。
食材への愛情が伝わる、ほろ苦い大人味の地卵プリン、いただきました。
山下さん、作り手の皆さんごちそうさま。
※ ※ ※
梅や綱島店
横浜市港北区綱島西1-7-15
tel 045-545-2877
HP http://umeya-torinikuten.co.jp/tsunashima.html
年中無休