■内橋克人「共生の大地 新しい経済が始まる」〜今日なお示唆的な提言と先駆的事例〜「使命共同体」と「多元的経済社会」

2009年10月21日

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「匠の時代」で知られ、小泉政権の市場原理主義=新自由主義への警鐘を鳴らし続けて名を上げた「良心的」経済評論家内橋克人の本。
1994年に日本経済新聞に連載され、1995年に出版されたもの。当時は1991年のバブル崩壊後の一時的な相対安定期だが後に「失われた10年」といわれる時期の真っ最中であり、不良債権問題による銀行危機・金融再編の前の時期である。

内橋は「使命共同体」というパラダイムと、その帰結としての「多元的経済社会」という考え方を提言する。
「使命共同体」とは、「同一の使命(ミッション)を共有する人々の、自発的で水平的な集まり」であって、生協やNPOなどのような利益を目的としない、資本主義に対する「市民の自衛・対抗勢力」をさしている。

「多元的経済社会」とは、利益主義の資本主義の「企業内有用労働」の一元的経済社会に対して、利益主義でない「使命共同体」のような「社会的有用労働」による経済活動をもう一つの重要な要素として併せ持つ社会である。

筆者はたくさんの萌芽的事例に、時代の行方を語らせているが、ここで語られていることは、まるでその後の市場原理主義による金融資本の暴走と破綻を見通しているようであり、今日の地球環境保全のエコ経済や、NPOの活発化や民主党政権の「脱官僚依存」政策、を予言もしていて、今もなお十分示唆的である。
そして、筆者の「予言的提示」は、先に取り上げた、大江正章「地域の力」(岩波新書2008年2月20日)などに引き継がれ、いまや現実のものとなりつつある、だろう。

(たくさんの先駆的事例の一つとして、失敗に終わったが、柄谷行人のNAM(New Associationist Movement)を主導的にになった、フェアトレード(自分だけでなく、相手の利益も考える「公正価格」を実現する)を主張し実践する潟vレスオールタナティブが取り上げられているのは、筆者の観察の鋭さでもあり、主張はしても実践することの困難な「使命共同体」の現在を象徴してもいるだろうか……)

叙述は達意で無駄がなく、論旨は明快、大変もっともではある。が、多くの事例を取り上げるせいか、週刊誌的な簡潔な叙述によるものか、「事実の紹介」の足早な駆け足の連続で、もう一つ思想的に、また、事実のディテールにおいても掘り下げがほしいようにも思われる。

(対象の「内部」にまでせまり、入り込み格闘することを通じて、対象のその自己との関係性を、自己にとって切実な課題として「内在化」してゆく衝迫がないから、表面を軽くなぞっているような「軽さ」を脱出できない、というコトバの水準の問題である。ここではそのような観点は除いてもよいか、と思ったが、やはり、そうは行かないように思われる)


※     ※     ※

■内橋克人「共生の大地 新しい経済が始まる」岩波新書1995年3月20日第1刷2007年2月15日第25刷

目次
1 「使命共同体」のパラダイム 1
  1協同の思想 2
  2資本・経営・労働を一体化する 9
  3自然に向けて住まいを開く 17
  4中小企業を支える精神 25
  5労働者協同組合 33
  6働きがいのある仕事を起こす 41
  7顔の見える国際協力 49
2 「辺境と周縁」の条理 57
  1丹後ちりめんの危機 58
  2過疎に挑む「童話村」 66
  3技術革新の逆説に撃たれる 74
  4町工場から強力達人集団に 82
  5国境をこえる泉州織物 90
  6活性化の道を探る「生活の町」 98
  7地域産業の原点を問いなおす 106
3 「実験的社会システム」の旗 115
  1再生可能エネルギーへの転換 116
  2市民協同発電方式へ 123
  3車を迂回させる街 131
  4コンソーシアムで問題解決をめざす 139
  5エネルギー・アウタルキーへの挑戦 147
  6社会コストがエネルギー転換を迫る 155
  7官主導の政策に限界 163
4 「政策と合意」のはざま 171
  1行政の壁に風穴をあける 172
  2公共事業シェア変動せず 180
  3“たなざらし”にされる議員立法 187
  4特殊法人存続に意味はあるか 195
  5国際舞台にNGOの力拡大 203
  6市民排除の政策決定がリスク生む 211
5 「多元的経済社会」への道標 219
  1社会的有用労働の活用へ 220
  2NPOが地域を活用する 228
  3ゼロ・エミッションへの挑戦 240
  4よりよく生きることを支える社会 248
あとがき
この記事へのコメント
その子が幽霊だったとしたら、支払われてた給料はどーなってたんだろう?
Posted by 矢口真里 浮気 at 2013年06月18日 19:46
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